『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(2012年11月:今野晴貴著)刊行から2年余、同じ著者による『ブラック企業2』が3月に上梓されました。
前著発刊後、厚生労働省は「若者の『使い捨て』が疑われる企業』対策、「若者応援企業」等のキャンペーンをすすめるなどを展開してきていますが、新著によれば、
「未だにブラック企業の被害は拡大し続けている。」
「被害者の多くはブラック企業に積極的に入社し、また、自ら『辞めない』で働き続けている。」
とのことです。
今回は、「ブラック企業」とは対極にある主として従業員の健康増進等による健全な企業体の確立にむけて、企業の取り組みを促す行政の最近の動きを紹介します。
データヘルス計画手引きの公表
厚生労働省と健康保険組合連合会は昨年12月に『データヘルス作成の手引き』を作成、公表しています。
『データヘルス計画』とは、健診・レセプト情報等のデータの分析に基づいて保健事業をPDCAサイクルで効果的・効率的に実施するための事業計画のことです。
この計画では、健康日本21で打ち出された「1次予防重視」と、高齢者の医療の確保に関する法律で規定された「特定健診・特定保健指導」を両輪とし、ICTの進歩(健診・レセプト情報等の電子化と解析技術の進歩)とPDCAサイクル技法をエンジンとして、集団全体に働きかけ全体のリスクの低下を図るアプローチや、危険度がより高い者に対してその危険度を下げるよう働きかけるアプローチの両面からなる保健事業をより効果的・効率的に展開するものとのことです。
これに加えて、健康日本21(第二次:平成25年度から平成34年度)が強く打ち出した「健康を支え、守るための社会環境の整備」という視点に立って、健康的な職場環境の整備や従業員における健康意識・生活習慣の改善に向けた取組を、事業主との協働の下で推進するとしています(コラボヘルス)。
これらを通じて、働く人々と家族のさらなる健康、より健康的な職場の実現を目指すというもので、実現すれば、医療費の適正化や職場の生産性の向上等さまざまな効果が期待できるとの目論見のもと、特に各健康保険組合の取組みを促しています。
(下記の「健康経営」の促進策と同じく、「日本再興戦略」による取組の一つになります。)
健康経営銘柄の公表
経済産業省は、「日本再興戦略」による取組の一環として、東京証券取引所と共同で、「健康経営銘柄」22社を初めて選定し、3月25日に公表しました。
健康経営銘柄は、東京証券取引所の上場会社の中から、従業員等の健康管理を経営的な視点で考えて戦略的に実践している企業を、業種区分毎(1区分で1社)に選定して紹介するものです。
こうした企業は、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらすことで中長期的な業績・企業価値の向上を実現し、投資家からの理解と評価を得ることで株価の向上にもつながることが期待されます。
選定に当たっては、経済産業省が、全ての上場会社に対して、経営と現場が一体となった健康への取り組みができているかを評価するための、「従業員の健康に関する取り組みについての調査」を実施しました。
回答のあった企業について、
①「経営理念・方針」
②「組織・体制」
③ 制度・施策実行
④「評価・改善」
⑤ 法令遵守・リスクマネジメント
上記五つの側面からスコアリングを行い、さらに、各業種上位企業の中から財務面でのパフォーマンスがよい企業として、22社が選定されました。
平成26年度に選定された企業は次の22社です。
アサヒグループホールディングス、東レ、花王、ロート製薬、東燃ゼネラル石油、ブリヂストン、TOTO、神戸製鋼所、コニカミノルタ、川崎重工業、テルモ、アシックス、広島ガス、東京急行電鉄、日本航空、SCSK、丸紅、ローソン、三菱UFJフィナンシャル・グループ、大和証券グループ本社、第一生命、リンクアンドモチベーション
ストレスチェック制度実施マニュアルの公表
4月のこの欄に掲載したストレスチェック制度に関し、5月7日にその実施マニュアルとQ&A、そして説明会用パワーポイントシートが厚生労働省のホームページに掲載されました。ご参考まで。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/