エクセル関数への関心の高揚
昨年は、年初に生涯初めてパソコン教室に通い、エクセル関数等の基本を学習しました。その成果をもってM社での人事賃金制度再構築の第1弾としての夏冬の賞与計算に応用することができ、解説書も提供させていただきました。現在は引き続き人事賃金制度の微調整作業を進めており、昇給・賞与ソフトの完成をめざしているところです。
このような作業と並行して、昨秋から年末にかけて、I社の給与計算につき3本のソフトを提供させてもらいました。旅客運送業の同社では、歩合給を主とするドライバー、顧客の勤務条件に対応するトラック運転手、事務職等に分かれ、更にそれぞれに無期契約従業員、有期・短時間契約従業員等が存在し、すでに独自の給与計算ソフトをもって算出されていました。しかし、月ごとに紙ベースでの税額表との突合せによる所得税計算とそのチェック作業等々、まだまだ効率化できる領域が大きいとみて、改良を提案し、実現したものです。
開発当初は明細書印刷には1枚ごとに新たに設けた従業員コードを入力してもらっていましたが、この2月からVBAを用い、ボタン1つで数十枚の明細書印刷を可能とするソフトに切り替えてもらうこととなりました。合わせてソフトの読み方、数値の見直し時期等を確認していただき、担当者がそのメンテナンスができるように技術移転の途上です。
エクセル関数に興味をもち、実務に応用していくに従い、パソコン作業がこれまで以上に楽しくなっていくのを感じているこの頃です。
モデル給与計算ソフト開発
このような知見は、創設したばかりの企業等小規模企業、企業の特定部門の特定者のみに適用する給与体系等をお持ちの企業さまの経営支援に活かせるのではないかと考え、モデル会社を設定して、その給与計算ソフトを考案、完成させることができました。以下その一端をご披露させていただきます。
(1)モデル企業の給与明細書
モデル企業は従業員40人(正社員20人、パート・契約社員20人)のメーカーと設定。最終的に各人に配布する明細書様式は次によります。A4サイズの用紙に上下2分し、控えと配布用を印刷します。
(2)シートの構成
ソフトは10枚のシートで構成しています。年末調整については現段階では対応できるまでに至っていませんが、累積シートを加工して労働保険申告、標報改訂、離職証明書作成のためのデータは簡単な集計作業で作成が可能となると作成者としては期待しているところです。
税額表 |
国税庁のHPに掲載される次年の税額表エクセルファイルを12月給与計算終了後、早めに取り込む。(以上・未満の列のうち未満の列を削除) |
賞与税額表 |
同上。千円単位で記載されているので、1円単位に加工。 |
マスターシート |
各人の従業員コードをキーに氏名、各賃金項目等の計算及び明細書に必要な事項を入力する。 |
勤怠データ |
月々の勤怠データを入力する。 |
計算表 |
明細書に記載すべき事項・数値がこのシートにすべて記載されるようシートを設計。 |
賞与計算表 |
賞与支給時の計算書。控除金計算特に所得税計算に威力あり。 |
明細書 明細書(時間給) |
キーは控え用紙氏名欄の下の従業員コードであり、計算表のチェック後同シート左肩にある「明細書印刷」ボタンを押すことで上記様式(上下で1人分の控えと手交用)が複数枚自動的に印刷される。 |
賞与明細書 |
賞与支給時の明細書。各費目の欄の位置は給与明細書の欄にそろえる。 |
累積 |
各年1月~12月(賞与を含む)の計算表を対象者の分のみコピーし貼り付け、A列に支給日を付す。 |
(3)シートと関数の入力
データ入力用のセルはライトイエローで塗りつぶし、文字を鮮やかな青とし、それ以外(関数等を用いて自動出力するセル)は塗りつぶしなしを基本に各シートを作成しました。
【マスターシート】
*図が小さくて恐縮です。
【計算表左部:支給金】
【計算表右部:控除金】
(4)使用関数の例
以下に使用したいくつかの関数を示します。(各最上行)
【マスターシート】2列目は該当セル、3列目はそこに入っている関数式を示す。
年齢 |
H5 |
=IF(G5=””,””,DATEDIF(G5,$G$1,”Y”)) |
生年月日(G5)が空欄ならば空欄とし、そうでなければ基準日(G1)から数えた年数を入れよ |
G5 |
=IF(G5=””,””,DATEDIF(G5,$G$1,”YM”)) |
生年月日(G5)が空欄ならば空欄とし、そうでなければ基準日(G1)から数えた年数を控除し余った月数を入れよ |
|
役割給 |
N5 |
=IF(F5="","",VLOOKUP(F5,$AD$5:$AE$9,2,0)) |
等級(F5)が空欄ならば空欄とし、そうでなければ役割給テーブル($AD$5:$AE$9)の等級にある金額を入れよ |
家族手当 |
R5 |
=IF(OR(AB5="",AB5=0),"",Z5*$AE$13+AA5*$AE$14) |
扶養家族 (AB5)がゼロまたは空欄ならば空欄とし、そうでなければ配偶者・子供の数に手当額($AE$13、$AE$14)を乗じたものを足して得た数値をいれよ |
【計算表】
健保 |
AD8 |
=IF(OR(D8="",マスターシート!V5=""),"",ROUND(マスターシート!V5*99.7/2,0)) |
給与計算対象欄(D8)が空欄か標準報酬月額(マスターシートV5)が空欄の場合は空欄とし、そうでなければ、標報額に99.7を乗じた値を1/2し、1円単位に丸めた額を入れよ |
所得税 |
AJ8 |
=IF(D8="","",IF(AI8<88000,0,VLOOKUP(AI8,税額表!$B$10:$J$350,AR8+2))) |
給与計算対象欄(D8)が空欄のときは空欄とし、そうでなければ課税対象額(AI8)が88千円未満の場合は「0」とし、88千円以上のときは、課税対象額と税額表シートの表($B$10:$J$350)の扶養家族数(AR8)相当列の2つ右の列の値を入れよ |
*賞与所得税ではVLOOKUP関数は不可(前月課税対象額・扶養家族数⇒乗率を選び賞与額に乗じる。)
企業担当者さまからお声がかかれば、ありがたく。
以上