バラモン左翼

「バラモン左翼」という言葉をご存じですか。

 

米国の大統領選がトランプ前大統領の返り咲きで決着したことを受けて、濱口桂一郎氏(労働政策の研究者)が、トマ・ピケティ(『21世紀の資本』の著者であるフランスの経済学者)の2018年の論文「バラモン左翼対商人右翼」をブログに再度紹介しており、そこで小職は初めて認識した次第。バラモンはご存じの通り、インドのカースト制度における知識階級です。対する商人はヴァイシャ。

ピケティ率いる50人ほどの国際的な研究チームが、有権者の投票行動が、所得、資産、学歴、民族的出自、宗教に応じて、どう変化するのかを調査したそうです。調査対象期間は19482020年、調査対象の民主主義国も50程度と非常に規模が大きいものです。結果、次のように過去の傾向と大きく異なり、ピケティは、「欧米の左派政党は庶民ではなく、もはや高学歴者のための政党となった」というのです。かつて西側諸国では、有権者は所属する社会階級に応じて投票先を決めていたが、今ではその構造は消失し、その過程で、左派政党は高学歴者に支持される政党へと変貌を遂げた。このような左派政党を支持する人々のことを、ピケティは「バラモン左

翼」と呼んでいます。

縦軸に所得をとり(上の方が高所得)、横軸に学歴をとると(右のほうが高学歴)、1950年代には右派政党は高学歴で高所得、左派政党は低学歴で低所得のところに集まっていました。が、直近の2010年代には若干の例外を除き、どの国も右派は低学歴、左派は高学歴に移行してしまいました。((低学歴高所得と高学歴低所得の人々の投票行動比較? 学歴と所得の逆相関かと違和感を覚え、私自身はこのグラフの意味を必ずしも理解し得ていないのですが。)

 

なお、今の米国を見ると、ビジネス・エリートは昔と同じように共和党に投票していますが、博士号取得者の80%は民主党に投票しているとのことです。