水五訓

「水五訓」(「水五則」ともいう)という人生訓が、経営者(特に水道関係者)や管理者、あるいは学校長等に好まれているとのこと。あるいは共感を覚える方もいらっしゃるかと思い、紹介します。次の通り(紹介者によっては微妙に文言を異にしています)です。

一、自ら活動して他を働かしむるは水なり

二、常に自己の進路を求めて止まざるは水なり

三、障害に逢ひ、激しくその勢力を百倍し得るは水なり

四、自ら潔うして他の汚濁を洗ひ、清濁併せ容るゝの量あるは水なり

 

五、洋々として大洋を充たし、發しては蒸氣となり雲となり、雨となり雪と變じ霰と化し凝っては玲瓏たる鏡となり而も其性を失はざるは水なり

これを唱えたのは誰か? 黒田官兵衛だ、太田道灌だ、あるいは王陽明だとする人、更には「中国の古い時代の文献にある」(自ら調べもせずインターネットに堂々とその旨を記す方もあり)などと諸説があるようです。しかし、昔の人は空に浮かぶ雲を見て、地上の水が姿を変えたものだなどと思いはしない。由来を問われた高島俊男氏(19372021)は、『お言葉ですが』別巻1「水五訓の謎」でそう断じ、これは昭和の作だととらえ、その考察に複数の愛読者(その中の一人は小職の知人)からの情報を加えて、昭和4年の大衆誌『キング』の初出(大野洪聲名で)に行き着いた旨を書いています。

 

高島氏は中国文学者で、辛辣さ、諧謔、飄々としたところもある一方、深い知識をわかりやすい文章で書かれるので、小職は、『お言葉ですが』のシリーズのほか、これまでにいくつかの著書を楽しく読みました。『漢字と日本人』(文春新書)などで得るところも多くありました。